運命の一言

ある時、かけてもらった言葉が、その後の運命を大きく左右することがある。

 

先日、声楽科に通う生徒から嬉しい報告があった。

「歌の試験、どうだった?」 との問いかけに

「それがですね、、先生!」 と始まり・・・

自分のレッスンの専任の先生では無い先生から、

「あなた、良かったわよ」 とお声掛けを頂いたとちょっぴり照れながらも弾んだ声で伝えてくれた。

普段とても厳しく、褒めて下さることは殆ど無い専任の先生からも

「言葉の内容を理解して、声に乗せて届けていて良かった。」 とお褒めの言葉を頂戴でき、

一度は取りやめになっていた少し難しい曲を 次の課題曲としてレッスンがはじまりましたと。。。

更には、 「最近、私の声が好きだと言ってくれる友達がいるんです。」 と、晴れやかな笑顔で語ってくれた。

 

声楽科に進学し、学校での個人レッスンが始まった為、

暫く私のレッスンは、休んでいた彼女と 数カ月前に久しぶりに再会した時、

「学校はどう?」 と何気なく問いかけたら 目にいっぱい涙を溜めて、、 苦しい胸のうちをポツリポツリと語ってくれた。

「大丈夫。大丈夫だから。。」 と私の考えを伝えた。

 

 

間もなくして、彼女は私とのレッスンを再開し、 実に熱心に努力を重ねて来た。

まだ数ヶ月の事ではあるけれど、 目覚ましい成長を私は確信していたし、

彼女自身も表現したいことが一つ一つ出来るようになった事を実感し、

何より、歌うこと、歌の練習をすることが楽しくなっていることが 良く伝わってきていた。

 

そういう中での一言は、大きく彼女の心に響いたのだと感じた。

 

私にも経験がある。

やはり学校の先生のレッスンとは別に 発声を中心としたレッスンを受講する必要性を感じ、

学外で受講するようになってから数カ月後、 手応えを感じながら受けた学内特別演奏会のオーディション。

残念ながら出演者には漏れてしまったが、 指揮者の先生が、最後まで私を押してくれたと専任の先生から伺った。

ある日の帰り道、その指揮者の先生が、

「ああ、あなた、この前とても良かったよ! 僕は、凄く出て欲しかったんだけどね〜。

まぁ、歌は、ずっと続けていなさいよ!」 と、お声掛け下さった。

実は、、、その言葉を鵜呑みにして、 私は、どんな苦しい時も歌うことを手放したくないと思うようになり、 現在に至る。

発したご本人にしてみれば、 その時に感じた率直な思いを言葉にして下さっただけの事で、

後々まで覚えていて下さったかというとそうでは無いと思う。

けれど、言葉にして伝えてくださったことに心から感謝している。

あの時、大きなステージに立つことは叶わなかったが、

たった一人の人でも、私の演奏で心を動かす事が出来たのなら 、そのことにずっと価値があるように思えた。

そして、いつもそんなことを念頭に歌い続け、 指導をしている。

 

今回の彼女の報告は、 私にとっても喜びと自信をもたらしてくれるものだった。

 

そして、その一方で、 ある医師に、診断結果から、思いやりのない意見を投げられたことも 報告してくれた。

少し前の彼女であれば、どれ程、落ち込んでしまったかしれない。

けれど、しっかりした眼差しで、 「絶対に見返してやろう!って思ってるんです!!」 と言い放って、笑顔で帰っていった。

 

 

彼女は、これからの自分の生き方に ある覚悟を持ったように感じられた。

 

どんな一言が、その人の運命を左右することになるかは分からない。

ただ、心に強く感じたことは、言葉にして伝える勇気を持ちたい。

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