PROGRAM OVERVIEW

本日のリサイタルの演目・作曲家に関する歴史的背景について、ご説明させて頂きます。
(敬称は省略させて頂きます。)

本日は、いわゆるクラシック音楽・音楽芸術と私たちの距離を大きく近づけてくれた偉大な作曲家たちを取り上げています。

文化史的に見ますと、14世紀イタリアから始まり、16世紀にかけて西欧各国に広まった「ルネサンス」によって、音楽・美術・建築・文学など幅広い分野において、古典古代(ギリシャ、ローマ時代)文化を復興しようとする運動が起きました。
その中で、音楽は、キリスト教・宗教音楽、そして政治的権力とも深い関係を持ちながら、複雑な背景の中で発展していきます。

そして、オペラはルネサンスの中で、16世紀末イタリア中央部にあるフィレンツェ(当時トスカーナ大公国の首都)のサロンで、古代ギリシャ悲劇を範として、歌うような台詞を用いた劇から誕生したといわれています。
それから、当時国際的な自由都市・都市国家として繁栄していたイタリア北東部のヴェネツィアで、新たな富裕市民層が誕生していたことから、この富裕市民のためのオペラ劇場が17世紀中ごろまでに相次いで建てられ、オペラが大流行・大発展したといわれています。
その後、オペラはアルプスを越え、ウィーンやザルツブルクで新たな発展をしていくことになります。
当時、西欧の多くの国はまだ王政時代であることから、オペラは政治権力・国際政治における文化的誇示の手段として、宮廷音楽・宮廷劇場を通じて発展していった面も持ちます。

一方、16世紀(1515年)ローマ・カトリック教会が贖宥状(免罪符)を販売したことを契機に、ドイツ・スイス・フランスをはじめ、西欧各地に「宗教改革」が拡大していきます。
続いて、さらに広範囲で「市民革命」(17〜18世紀)が起き、その主体となった「ブルジョワ層」(中産階級・市民階級)の台頭によって、絶対王政から民主的な時代へ導かれていきました。(加えて、産業革命や資本主義も同時並行的に生まれていきます。)

このように、ルネサンス以降、キリスト教や絶対王政による支配から共和制化・民主化へ移行していく、社会構造の大きなうねりの中で、音楽もバロック派から古典派へ、古典派からロマン派へ移行し、オペラはより市民的な芸術作品に変化していきました。
因みに1733年には、ハプスブルグ家の皇后の誕生祝いのために、オペラ・ブッファの代表作となる「奥様女中」が上演され、作品的にはオペラ(セリア)の幕間に行う滑稽な喜劇だけを上演するという形態も成立しました。また、音楽的にはバロック派から古典派へ移行した時期でもありました。

こうした音楽・オペラが市民的な芸術となる「橋渡し」をした、代表的なヒットメーカーが「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」(古典派 1756年〜1791年 35歳没)です。
モーツァルトの三大ブッファ(フィガロの結婚/コジ・ファン・トゥッテ/ドン・ジョヴァンニ)をなくして、オペラがより市民に開かれた芸術として昇華することはなかったと思われます。
そして、モーツァルトの死と前後する18世紀終盤から19世紀終盤まではロマン派とされ、その時代の寵児であったのが「リヒャルト・ヴァグナー」(ロマン派 1813年〜1882年 69歳没)であり、彼のライバルでもあった「ジュゼッペ・ヴェルディ」(ロマン派 1813年〜1901年 87歳没)であると思われます。

日本においては、明治時代に西洋音楽が流入して以降、瀧廉太郎(1897年〜1903年 23歳没)が「荒城の月」「箱根八里」を、山田耕筰(1886年〜1965年 79歳没)が「からたちの花」「赤とんぼ」など、より日本に根付いた音楽を生み出してきました。
今回取り上げました作曲家「中田喜直」(1923年〜2000年 76歳没)は、瀧・山田に続く世代として、日本人により身近な音楽を、多くの童謡を通じて提供してくれました。

上述のとおり、本日の演目は、音楽と私たちの距離を、革命的に近づけてくれた作曲家の作品となっています。

また、オペラについては、作曲家が注目されがちですが、本日の演目にあるオペラは、台本作家が物語を書いていることについて、次のプログラムノートに於いて説明しております。
それは、今回のオペラの台本は、史実や古くからいい伝えられた伝説などを土台にしたものであり、このことはオペラが市民層に普及し発展していく過程において(古典派終盤からロマン派にかけて)、親しみやすさや、わかりやすさを持った芸術として市民に受け入れられていくことに、一定の役割を果たしたのではないかと考えるからです。

以上はプログラムの概要説明であり、個別の演目については、以下に記しております。
それでは、演奏を楽しんで頂けますと幸いです。

(書き手:NM)

 

※ 演目の詳細説明は、以下のリンクにございます。